ハーバード大生が下北沢の調査に来訪〜代替案の提案へ








「東京における駅と公園・コモンの融合による21世紀の環境・メディア空間の創造」をテーマに、ハーバード大学と慶應大学が共同で「東京再生」を研究。4年前に、下北沢フォーラムの小林正美代表がハーバード大学の客員教授としてピーター・ロウ教授と始めた「東京再生」プロジェクトの一環で、今年は、慶応大学の石川幹子教授が日本側の主管となり「新宿・渋谷・下北沢」の3箇所の都市問題を研究し、具体的提案を行います。10月9日より15日まで11名の大学院生が来日滞在し、チームにわかれて各地域の調査を手掛けました。


12月21日には、ハーバード大学で、その成果発表がありました。下北沢チームは、小田急線跡地利用と都市計画道路の路線変更についてとりあげ、専門家からは高く評価されていました。詳しい内容については、1月24日に下北沢で予定されているシンポジウムで、小林代表より説明があります。




来日中の研究活動の概要


渋谷駅前では、東急線の地下化と高層ビル建設計画、新宿の駅前では、バスとタクシーを集合させる交通ロータリーと高層ビル建設計画、そして、下北沢の駅前でも小田急線の地下化と交通ロータリー計画と、規模は違うもののよく似たタイプの計画があります。


ピーター・ロウ教授は、「駅前に高層ビルを建てると、そちらに客が集中してしまい、周囲にある従来の店舗群が壊れてしまうのではないか」「新宿駅南口に交通ロータリーを造ることは、かえって交通渋滞を招かないだろうか」「新宿御苑の脇にわざわざ道路を造る理由が不明だ」など、渋谷区、新宿区の担当者からの説明に対し鋭い質問を重ねました。


下北沢では、10月14日に世田谷区からと地域住民の代表の方たちからのヒアリングが行われました。世田谷区からは、「防災のための道路」「地元からの要望」「ともかく決まった計画」という説明があり、「道路が必要なのか?」という質問がロウ教授や学生たちから繰り返し出されました。


代沢小学校での住民からのヒアリングには、「しもきた商店街」の副理事長ら、地元中学校のPTAの方たちや「Save the 下北沢」の金子代表、「下北沢フォーラム」からも世話人で建築家の二瓶さんが参加。ミニラウンドテーブルのようなかたちでのヒアリングになりました。


「しもきた商店街」の方からは、平成13年には、中心には車を入れずに周囲に道路を巡らせる「リング」の発想でプランを作ったという話がありました。当時から世田谷区は、補助54号線道路を消せないという説明だったので、それならば道路を地下化させればいいのではないかと提案をしたものの、本来は消して欲しい道路とのこと。往々にして世田谷区は「地元の要望」と説明する道路ですが、実際に、道路を望んだことはないと強調。一方、具体的な地区計画で建物の高さなどの案が明確化され、勝ち組、負け組、損する人、得する人など差がはっきり出てきて、商店街としてこれ以上立ち入れない状態になってきたといいます。組合員には情報を伝えても、どちらの側にも加担していないという立場と説明されました。


「下北沢フォーラム」の建築家・二瓶さんからは、下北沢がゆっくりと成熟してきた街であるとのこと。早くから小田急線もバスも通っていたことで、車がなくても生活できる町でした。日常の生活では車に頼っていなので新しい道路は疑問とのこと。下北沢に来る多くの人は、電車を使っています。「通過」という機能のためにだけ道路ができるのなら、あえて下北沢らしい町を壊してまで道路を通す必要はなく、井の頭通りが広くなるだけで十分だとのこと。


中学校のPTAの方からは、なんと、今ここで、初めて道路計画があることを知りましたという発言もあり、まだまだ、地元でも知られていない問題であることを改めて認識しました。


「Save the 下北沢」の金子さんは、「過激に反対しているといわれるけれど、それほど過激なことを言っているとは思っていない。そのときどきに、行政は、本当のことを説明してきていない」と発言。そのときどきに、世田谷区は、本当のことを説明してきていないと強調しました。また、商店街の中に線引きをして、その人たちだけの意見を聞いていて、周辺住民の声を聞いていないことが、やり方での問題だと。そのほかに問題点を3つに整理。


1) 道路は北側のエリアをまったく破壊してしまう。少しの面積が道路で削られるということではなくて、商店街の特色を失ってしまうということになる。アトラクティブさが壊されてしまう。


2) 今は、ほとんど車に出会うことがないのに、道路が通ったら、あっというまに町は車で溢れてしまう。


3) 高層化の問題。建物自体が大きな影を落とすことが問題というだけでなく、小さな店舗が集まっているという構造を壊してしまう。結局、北側の商店街が破壊され、町が特色を失えば、人々が幸せにならないと思う。下北沢は、渋谷・新宿にあまりに近いからこそ、特色がないとだめだ。


防災については、「火事のときのことをどう思いますか?」とロウ教授。PTAの方からは、「細かい道には消防自動車が入らないところもあるという前提でいたほうが現実的なのではないか」という答えに、ロウ教授は、「その通り」とのこと。地震についても尋ねますが、「家屋の倒壊が死亡の原因」と、都市計画の専門家の蓑原さんの意見。そのために道路が必要という感覚は、市民のあいだでもなさそうでした。


「バスが一本しかないのに、どうしてロータリーをもつのかが不思議なのだけれど?」と、学生から質問。アメリカで都市計画の勉強をしてきた蓑原さんからは、「アメリカの学生には、どうしてこんな問題が起こるのか不思議だと思います。日本社会は民主主義にみえるかもしれないけれど、違うんですよ」と辛らつな意見がだされました。ロウ教授や学生たちは、「シンプルな疑問にも答えてもらえず、論理的な説明がないことが多い」という印象をもったと語っていました。